冷蔑れいべつ)” の例文
曲者は、絨毯じゅうたんをつかんで、ばっと、その上に押しかぶせると、冷蔑れいべつをこめた笑みをにやりと投げて、ふところ手をしたまま、表から出て行ってしまった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生糸を積んだほろ荷馬車の前を横ぎっても、誰も、そのすがたを、特に、不生産的冷蔑れいべつな眼で、見るものはない。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恋を——女への仏弟子ぶつでしのそういう態度を、極端に冷蔑れいべつし、むしろしゅうにさえ考えている三人には、石念のそれからの挙動が、ことごとにおかしくて、馬鹿らしくて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お十夜はというと、立慶河岸りっけいがしからお吉をつけてみようと言いだしたのは彼自身なのに、ここへ来ると、横着に腕ぐみをしたまま、二人の狼藉ろうぜきへ、むしろ冷蔑れいべつな目をくれている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自然の冷蔑れいべつにどやされて、眼がさめてみると、今さらのように、ものものしい引ッさげ刀も、急に気恥かしくなったか、銘々めいめい、ひとまず光り物をさやにおさめて、猫間堤のかげへ寄った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口をへの字に曲げて渾力こんりきをしぼっているかれの形は、力をこめればこめるほど冷蔑れいべつと滑稽を思わせますが、吾人にもこんな例がままあって、けばかえって不幸な扉を、無理にも開こうとし
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
処女おとめごころは、茶屋がよいの幾多の男性を見るにつけ、自分の行くすえは、こんな群れにはないものときめ、それらの気障きざな男たちを冷蔑れいべつし、五年前の武蔵の面影を、ひそかな胸の奥において
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聡明なひとみから冷蔑れいべつの光と微苦笑とを、無言にむくいられるだけだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが人間の咽喉のどから出る声か。内匠頭は、冷蔑れいべつの眼をっと与えた。だが、感じないのである、上野介は、片眼をつぶりながら、顔の半分を口と共にゆがめる癖がある。上顎うわあごの入歯を気にするのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このむじなめ! と弦之丞は心で冷蔑れいべつして
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口辺に冷蔑れいべつを漂わせて
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)