兄弟ふたり)” の例文
家に伝わる家祖のそんな遺言があるのを知ったのは、当時、兄弟ふたりともまだ二十歳はたちがらみのころだった。茫々ぼうぼう、三十年ぢかい前だった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仲よくお兄弟ふたりして、はしをとっておられたかと思ううちのことだった。俄に……み手の箸をも投げそうな語気を高められていたのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟ふたりは、そこからすぐ旅支度して、八重洲河岸の邸の外まで立ち廻った。塀の外からよそながら父但馬守に別れをつげたのである。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟ふたりは、何年ぶりかで会ったのである。戦場から戦場の生涯に行きはぐれたままのように——久しぶりの邂逅かいこうだった。しかも、変った姿で。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おかしい? と解珍かいちん、解宝の兄弟ふたりはともに首をかしげ合う。しかし毛旦那が住む屋敷地域の裏山一帯、これ以上は歩き探す余地もなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟ふたりも言っておりました。じつは十里はいで居酒屋をやっている姉さん同様な人がいるんだが……と、牢の中で、涙をたれて」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伯夷と叔斉の兄弟ふたりは、たがいに位を譲って国をのがれ、後、周の武王を諫めて用いられないと、首陽山にかくれて、生涯周のぞくを喰わなかった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟ふたりのことばには、どこか奥州なまりがある。吉次の耳にはよく聞き分けられた。なつかしくもあり、不審でもある。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駒をならべて、兄弟ふたりは炎天へ馳け出した。あぜの豆の葉に白いほこりが舞う。——吉次は、おうなに代を与えて後から走った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや。わしとおまえとの、兄弟ふたりの心次第だろう。そとの敵は、あらまし、恐れるにはたらん。……かつはまた」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、骨休めにと、茶を入れて、宥わり慰めてくれる間も、母はそうした訓誡くんかいを、兄弟ふたりに対して、忘れなかった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「つまらんことを。……なあ直義、おたがいは、いつまでも、腕白時代の兄弟ふたりの気心のままで行きたいものだ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟ふたりのあいだに、この問題は、まだ十日前のままだった。あれ以来、どっちも自分の意見を曲げないのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夕雲へ眸がゆく、兄弟ふたりとも黙りこくったままである。ひとつ主に仕えても、ふたりの観方は同じではない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんでそんな恐ろしいことを、推量など致しましょう。きのう大蔵ヶ谷で、お兄弟ふたりが語っているのを、つい耳にしてしまったのです。置文とやらのことまでも」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつはまた、丹波の奥、梅迫うめさこの山家に難を避けておられる兄弟ふたりの母上、わしの妻子らも、早う都へ迎え取りたい。直義は久しく会わぬ母者ははじゃを見たいとはおもわぬか
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(もし、ここに、兄弟ふたりの母がまだ生きておいでになったら、どうなさるだろうか)と考えた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ毎々、夢窓国師の斡旋あっせん兄弟ふたりのあらそいを解いてくれた。が、そのひとも今はいない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやその五大院ひとりでは、万寿まんじゅ亀寿かめじゅの幼い兄弟ふたりを、しょせん一時に助け出すことはなるまい。兄の万寿はよそへ落したろうが、弟の亀寿は、たれの手にまかせたことか」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに、兄を解珍かいちん、弟を解宝かいほうという猟師りょうしがいた。父もなければ母もない兄弟ふたり暮らし。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄弟ふたりの合す鎚音は、御先祖様の御座らっしゃる土の下まで響いて行こうぞ。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここらで会っておかないと、もう生涯、会えない兄弟ふたりかも知れない……」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直義の感情は丸裸なものになれと内からささやかれている呼吸いきづかいなのである。兄弟ふたりにして一人にひとしい骨肉感が濃厚に彼の血のうちで何をいおうと恐れはないような勇を想起させていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その人生観でも兄弟ふたりはまったく両極の人だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「知らぬの」兄弟ふたりとも、そう答えた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)