僭称せんしょう)” の例文
ところが五名の女給は一丸となり、店側の忠実なる鬼の相を露呈して、自ら特権階級を僭称せんしょうする倉田を軽蔑してはゞからぬ如くである。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
とはいえ、もしこの曹操が出なかったら、国々の反乱はなおまず、かの袁術の如く、帝王を僭称せんしょうするものが幾人も輩出したろう。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治維新の行政庁は、名義を正すの目的をもって、かくのごとき官名の僭称せんしょうきらいあるあざなは一時禁ぜられたことがあります。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「いま公会堂へ集まっているやつらは小物だ、右翼団体などと僭称せんしょうしておるが、人物らしい人間は一匹もおらん、みんな木っ端のようなやつばかりなんだ」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほのかに聞くにつけても、それらの面々の面目に係ると悪い。むかし、八里半、僭称せんしょうして十三里、一名、書生の羊羹、ともいった、ポテト……どうも脇息向のせんでない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今でも帆村荘六は、あの“東京要塞”と僭称せんしょうしていた某大国の秘密砲台の位置発見に大功たいこうをたてた自記地震計のドラムを硝子ガラス張りの箱に入れて、自慢そうに持っている。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この時に当って、呉王孫権は、宿年しゅくねんの野望をついに表面にした。すなわち彼もまた、魏や蜀にならって、皇帝を僭称せんしょうしたのである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それへ渡らせられるは、近ごろ自ら皇帝と僭称せんしょうして、天をおそれぬ増長慢の賊、袁術とはおぼえたり。いで、関羽が誅罰ちゅうばつをうけよ
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淮南わいなん袁術えんじゅつは自己の僭称せんしょうせる皇帝の名と共に、持つところの伝国の玉璽ぎょくじをも、兄袁紹えんしょう譲与じょうよして、内にはふたり力をあわせ、外には河北、淮南を一環に合体して
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、袁術は皇帝を僭称せんしょうして、天下をみだす叛逆の賊である。かくれもない天下の敵である
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僭称せんしょうの賊、欺瞞ぎまんの悪兵。故にこそ、大いに逆賊操を討つべきではないか。彼がいつわりの名分を立てるなら、われらはもって朝命を汚す暴賊を討つべしとなし、膺懲ようちょうの大義を
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
号を仲氏ちゅうしと立て、台省官府だいしょうかんぷの制を布き、龍鳳のれんにのって南北の郊を祭り、馮氏ふうしのむすめを皇后とし、後宮の美姫数百人にはみな綺羅錦繍きらきんしゅうよそおわせ、嫡子をたてて東宮と僭称せんしょうした。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは曹操にしてみれば災いを未然に防ぐ消極的な一工作に過ぎなかったが、皇城を中心として、彼の魏王僭称せんしょう以来、とみに激化していた純粋な朝臣たちには、かなり大きな刺戟を与えた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)