侯爵こうしゃく)” の例文
さて、ちょうど猫吉の主人、すなわちカラバ侯爵こうしゃくが、水につかってからだを洗っているとき、そこへ王様の馬車が通りかかりました。
侯爵こうしゃくを会頭に頂くその会は、彼の力で設立の主意を綺麗きれいに事業の上で完成したあと、彼の手元に二万円ほどの剰余金をゆだねた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この二人は、侯爵こうしゃく津のかみが、参宮の、仮のやかたに催された、一調の番組を勤め済まして、あとを膝栗毛で帰る途中であった。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「T侯爵こうしゃくが来られた時でも、わしはこれ一枚で御免ごめんこうむるんで」といって、伯父は由布守をもって自ら任じていた。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
尚昌しょうしょう侯は私の同級生でした。幾度かの機会に沖縄の品々を見ていたく心を打たれた私は、ついにその研究を志すに至り、侯爵こうしゃくにこの相談をしたことがあります。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
自分の名前にって帝都の上流社会がこんなに集まっている。自分の名に依って、大臣も来ている。大銀行の総裁や頭取も来ている。侯爵こうしゃくや伯爵の華族達も見えている。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なんとか云う旧帝国の侯爵こうしゃくが一人、イイナのあとを追っかけて来てね、おととい東京へ着いたんだそうだ。ところがイイナはいつのまにか亜米利加アメリカ人の商人の世話になっている。
カルメン (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いばりやでぼうで、世界一大金持のようにおもい上がって、ほかの商人たちのなかまを見下みくだしながら、侯爵こうしゃくとか伯爵はくしゃくとか貴族きぞくのやしきによばれて、ぶとう会やお茶の会のなかまになることを
昨夜は何処の国の侯爵こうしゃくがお忍びでいらしったなどと法螺ほらを吹いたり、英字新聞をひろげながら母国の東洋政策を論じて煙に巻いたりしたものだけれど、この頃ではとんとそう云うヤマ気はなく
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
既にして更に西園寺さいおんじ侯爵こうしゃくもまたちょくを帯びて渡韓したりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
御殿の衣裳いしょうべやのかかりにいいつけて、いちばん上等な着物を、いそいで持って来て、カラバ侯爵こうしゃくにお着せ申せ、とおっしゃいました。
「王様、わたくしは、主人カラバ侯爵こうしゃくからのいいつけで、きょう狩場かりばで取りましたえものの兎を一ぴき、王様へけん上にあがりました。」