価値あたい)” の例文
旧字:價値
席上の各々方おのおのがた、今や予が物語すべき順番の来りしまでに、諸君がかたり給いし種々くさぐさの怪談は、いずれも驚魂奪魄きょうこんだっぱく価値あたいなきにあらず。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私にそれだけの価値あたいがないからの事で、あはれ私に、モニカほどの力はなくも、せめて今少し夫の敬重を惹く価値あたいがありますなればと、そぞろに身を悔やむ様になりました。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
個々の仕事なら、それでよいかも知らぬが、人世の目的という大きな考えは、決して意識いしきなく機械的に動くばかりでは、その目的を達し得ぬ。価値あたいなき仕事に目をつけねばならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一顧の価値あたいもございませんけれど、なんとなく私には、無機物を有機的に動かす、不思議な生体組織とでも云えるものが、この建物の中に隠されているような気がしてならないのです
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その際ザビエルは今日の価値あたいにして、五億円に近い黄金を、持参したということであり、その金ははたして布教一方に用いる、浄財と認めてよいだろうか? それとも宗教に名をりて
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
故に三下さんさがりの三味線で二上にあがりを唄うような調子はずれの文章は、既に文章たる価値あたいの一半を失ったものと断言することを得。
が、地方としては、これまで経歴へめぐつた其処彼処そこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日なかふつかばかりの休暇やすみを、紫玉は此の土地に居残いのこつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、地方としては、これまで経歴へめぐったそこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日ばかりの休暇やすみを、紫玉はこの土地に居残った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そぞろに声掛けて、「あの、きのこを、……三銭に売ったのか。」とはじめ聞いた。えんぶだごんの価値あたいでも説く事か、天女に対して、三銭也を口にする。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さまでに時刻おくれては、枕に就くととりうたわむ、一刻の価値あたい千金と、ひたすら式を急ぐになん。さはとて下枝を引起して、足あらばこそ歩みもいでめ、こうして置くにしくことあらじ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これにお京のお諸礼式は、長屋に過ぎて、瞠目どうもく価値あたいした。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)