ならい)” の例文
乞食こつじきの徒といえども、なおかつ雨露をしのぐべきかげに眠らずや。世上のならいをもってせば、この人まさに金屋に入り、瑶輿たまのこしに乗るべきなり。しかるを渠は無宿やどなしと言う。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれは大勢たいせいの既に定まったのを知らずに、己の事情の帰国に適せぬことを縷々るるとして説こうとした。霊肉共に許した恋人のならいとして、いかようにしても離れまいとするのである。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
後へ引返ひっかえしてかの石碑の前をいで、蓬莱橋まで行ってその岸の松の木にもやっておいてあがるのがならいで、風雨のはげしい晩、休む時はさしき、年月夜ごとにきっとである。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)