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余煙
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よえん
倒れたのは、馬ばかりか、人ばかりか、二
尺角の
白木の十
字架まで、上から
真ッ二つにさけ、
余煙のなかへゆら、——と横になりかかってきた。
荷車が驚いて
道側の
草中に
避ける。
鶏が
刮々叫んで
忙てゝ
遁げる。
小児の
肩を
捉え、女が眼を
円くして見送る。
囂々、
機関が
鳴る。
弗々々、
屁の如く
放り
散らすガソリンの
余煙。
お長屋の
屋根むこうに、まだ黄色く立ちのぼっている
馬糧小屋の
余煙をながめて、ひとりごとをつぶやいた。