余所余所よそよそ)” の例文
旧字:餘所餘所
「なに二人ともる所の令嬢ですよ、御存じのかたじゃありません」と余所余所よそよそしい返事をする。「ナール」と主人は引張ったが「ほど」を略して考えている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四郎の言葉には、すこし余所余所よそよそしいところがあるばかりで、一向恨みがましい節も見えなかった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
この歌には、明かに「妹」とあるから、こまやかな情味があって余所余所よそよそしくない。そして、この「妹乗るらむか」という一句が一首を統一してその中心をなしている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
妻君その様子のあわてたるを笑い「ハイ来ておいでです、モシお登和さん」と振返りて呼びけるにお登和も詮方せんかたなく座敷へ入りしが心にはばかる事ありけん、余所余所よそよそしく大原に黙礼せしのみ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
十五六年もの間、ぱったりと音沙汰のなかった叔父と、こうして偶然に会ったというのに、その態度のあまりの余所余所よそよそしさには、中野自身、かえって狼狽に似た気持に襲われたほどであった。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
(画家の方に背中を向け、余所余所よそよそしく。)どう致しまして。
それになぜ今はこんなに余所余所よそよそしくなっているのだろう。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
そこで一首がしっとりと充実して決して申訣もうしわけ余所余所よそよそしさというものが無い。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それと同様に妻君の何かうかない顔をしていて良人にたずねられる時、イエどうも致しませんと余所余所よそよそしい返事をしてやっぱり浮ない顔をしていたら良人の心配はいよいよ深くなるばかりだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何処どこまでも余所余所よそよそし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)