伊留満いるまん)” の例文
勿論、上人は、自分についてゐる伊留満いるまんの一人が、西洋の薬用植物か何かを、日本へ移植しようとしてゐるのだと、思つたのである。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さきよりこの一群に、着きつ、離れつ随ひ来れる油売、実は伊留満いるまん喜三郎、油桶は持たで、青き頭巾かぶれる。叱咤せられ、袖かざしてすさる。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
天竺てんじく南蛮の今昔こんじゃくを、たなごころにてもゆびさすように」したので、「シメオン伊留満いるまんはもとより、上人しょうにん御自身さえ舌を捲かれたそうでござる。」
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
われこそ真は大神でいゆすがしもべ伊留満いるまんあんとにゆすでおぢやるぞ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
天文十八年、悪魔は、フランシス・ザヴイエルにいてゐる伊留満いるまんの一人に化けて、長い海路をつつがなく、日本へやつて来た。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「シメオン伊留満いるまん一人を御伴おともに召され」ていたが、そのシメオンの口から、当時の容子ようすが信徒の間へ伝えられ、それがまた次第に諸方へひろまって、ついには何十年か後に
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると、それがまぶしかつたのか、伊留満いるまんはちよいと顔をしかめて、下を見たが、すぐに又、前よりも、人なつこい調子で、冗談じようだんともほんとうともつかずに、こんな事を云つた。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
右紅毛の伴天連ばてれんろどりげ儀、今朝こんてう伊留満いるまん共相従へ、隣村より篠宅へ参り、同人懺悔こひさん聞き届け候上、一同宗門仏に加持致し、或は異香をくゆらし、或は神水を振りそそぎなど致し候所
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)