伊万里いまり)” の例文
旧字:伊萬里
茶飲茶碗ちゃのみぢゃわん二種。藍絵あいえ磁器。窯は伊万里いまり。大きさほぼ同じく丈一寸七分、口径二寸三分。日本民藝美術館蔵。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
昔肥前の松浦領と伊万里いまり領と、領分境をきめようとした時に、松浦の波多三河守はたみかわのかみは、伊万里兵部大夫ひょうぶだゆうと約束して、双方から夜明けの鶏の声をきいて馬を乗り出し
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
汽車で行くなら、国鉄で博多から筑肥線で伊万里いまり行きへ乗り、東唐津のふたつ手前、浜崎駅で下車。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
いづれも模様も何んにも無い、伊万里いまりの白い徳利、一本には唯今申上げた南蛮物の毒酒が入って居り、一本には唐土もろこしから渡った、不老長寿の霊薬が入って居ります。この通り
「いえね、あした早くって、旦那といっしょに伊万里いまりのほうへ年例の仕込みにゆきますからね、ちょっとこの前を通ったついでに、しばらくのお別れに寄ってみましたのさ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
陸路から伊万里いまり嬉野うれしのを抜ける山道づたいに辛苦艱難をして長崎に這入ると、すぐに仲間の抜荷ぬけに買を呼集め、それからそれへと右から左に荷をさばかせて、忽ちのうちに儲けた数万両を
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さてところで信長だが、こいつはとても感心な奴で、悪党振りが大きかった。そこで考えたというものさ。きゃつらの財産をふんだくってやれとな。……伊万里いまり伊万里、お前へ聞こう。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
久米一ほどの名人の火入ひいれする窯焚かまたきはそうザラにあるものでなく、大川内おおかわち伊万里いまり有田ありた三地さんちを通じてみても、今度の献上陶器けんじょうすえものの火入れは、どうしても百助でなければおさまりがつかない。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの瀬戸物はどこで出来るんだと博物の教師に聞いたら、あれは瀬戸物じゃありません、伊万里いまりですと云った。伊万里だって瀬戸物じゃないかと、云ったら、博物はえへへへへと笑っていた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつぞやおなべ伊万里いまり刺身皿さしみざらの箱を落して、十人前ちゃんとそろっていたものを、毀したり傷物にしたり一ツも満足の物の無いようにしました時、そばで見ていらしって、過失そそうだから仕方がないわ
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
錦手や伊万里いまりの山の薄紅葉 同
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
伊万里いまり」を離れて日本の磁器を発達させ得たであろうか。あの高麗人こうらいびとの心情なくして、あの「高麗焼」の線を産むことはできぬ。工藝の美は多元的美である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかし伊万里いまりとか瀬戸とかから遠い北方の国々には、容易に行き渡らなかったと見える。それに北国の人々は保守的であるから在来の習慣を破ることをなかなかしない。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
有田を訪う者はあの泉山いずみやまを忘れまい、日本の津々浦々に「伊万里いまり」の名で通る焼物の大部分は、原料をそこに仰いでいる。試験所の松林氏に案内されて、石素地いしきじの泉であるその山に入った。
北九州の窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)