付纏つきまと)” の例文
慶三は独りで往来を歩いている時または店で働いている時も、絶えずお千代の肌のにおいがもやもや身に付纏つきまとっているような心持がしてならなかった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こいつうまいと駆けて来ると黒い人が出て来てガラガラと通行止めた、馬鹿馬鹿しい、死ぬ時までも邪魔の神は付纏つきまとう。汽車は無心にゴロゴロとうなりながら過ぎ去った。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
肩へつかまらせるやら、しなびた乳房をなぶらせるやら、そんな風にして付纏つきまとわれるうちにも、何となくお種は女らしい満足を感じた。夫に捨てられた悲哀かなしみも、いくらか慰められて行った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三膳出しましたといって、かえってこの男をあやしんだ、ここおいてこの男は主人の妻子が付纏つきまとって、こんな不思議を見せるのだと思い、とてのがれぬと観念した、自訴じそせんととっえす途上捕縛ほばくされて
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
「お酒に女。さうなるときまつて勝負事ツて云ふやつが付纏つきまとつて来ますからね。」
にぎり飯 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「お酒に女。そうなると極って勝負事ッて云うやつが付纏つきまとって来ますからね。」
にぎり飯 (新字新仮名) / 永井荷風(著)