仏蘭西人フランスじん)” の例文
旧字:佛蘭西人
と思ふと直に、先月或雑誌で私を批評して、ニグロが仏蘭西人フランスじんの中に混つたやうな、と嘲笑してあつた文字と思ひ合された。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
仏蘭西人フランスじんきまって Servietteセルヴィエットおとがいの下から涎掛よだれかけのように広げて掛けると同じく、先生は必ずおりにした懐中の手拭を膝の上に置き
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここに滞在している仏蘭西人フランスじんかわったプロフェッサが一人いることは、いつか初めて葉子をつれて、日本座敷に泊まっていた時、マネイジャ格の老ボオイから聞いた話だったが
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
主婦の母は、二十五年の昔、ある仏蘭西人フランスじんとついで、この娘をげた。幾年か連れ添ったのち夫は死んだ。母は娘の手を引いて、再び独逸人ドイツじんもとに嫁いだ。その独逸人が昨夜ゆうべの老人である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一見、死よりも強い恋と見做みなされ易い場合さえ、実は我我を支配しているのは仏蘭西人フランスじん所謂いわゆるボヴァリスムである。我我自身を伝奇の中の恋人のように空想するボヴァリイ夫人以来の感傷主義である。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
仏蘭西人フランスじんエミル・マンユの著書『都市美論』の興味ある事は既にわが随筆『大窪おおくぼだより』のうちに述べて置いた。
叔母はその父親が、長いあいだある仏蘭西人フランスじんのコックをして貯えた財産で有福に暮していた。その外人のことを、お庄はよく叔母から聞かされたが、屋敷へ連れられて行ったこともあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「この人の言葉は綺麗きれいだね。Rの音などは仏蘭西人フランスじんのようだ。」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
仏蘭西人フランスじんヱミル・マンユの著書都市美論の興味ある事は既にわが随筆「大窪おほくぼだより」のうちに述べて置いた。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)