些々さゝ)” の例文
併しながら、局部の些々さゝたる勝利から全線の勝敗が逆睹ぎやくとされないと同じく、そんなことはいうに足りない。
文芸運動と労働運動 (旧字旧仮名) / 平林初之輔(著)
馬琴は些々さゝたる非写実文人、西行は無慾の閑人となりて、白石の如き、山陽の如き、足利尊氏の如き、仰向すべきは是等の事業家の外なきに至らんこと必せり。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
與へ干殺ほしころさんとこそたくみけれされ無慚むざんなるかな藤五郎は其身不行跡ふぎやうせきとは云ながらわづか三でふ座敷牢ざしきらう押籠おしこめられ炎暑えんしよの甚はだしきをもしのぎかね些々さゝたる庇間ひあはひの風を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今迄私は私の些々さゝたる生活の出來事を詳細に亙つて記し、私の生涯の最初の十年の爲めに殆んど同數の章をつひやした。しかしこれは普通の自叙傳となるべきものではない。
生れて人間にんげんの價値をも知らず、宇宙の意味をも考へないで、一生を衣食いしよくため營々えい/\として浪費らうひして了ツたら、其は随分つらいだらうが、たか些々さゝたる肉躰上にくたいじよう苦痛くつうのみなのだから
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)