云出いひだ)” の例文
その得意先とくいさきの一けん橋場はしば妾宅せふたくにゐる御新造ごしんぞがおいと姿すがたを見て是非ぜひ娘分むすめぶんにして行末ゆくすゑ立派りつぱな芸者にしたてたいと云出いひだした事からである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
分間ぷんかんもくして兩手りやうてひざこすつてゐた郵便局長いうびんきよくちやうまた云出いひだした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
蘿月らげつは一家の破産滅亡めつばうむかし云出いひだされると勘当かんだうまでされた放蕩三昧はうたうざんまいの身は、なんにつけ、禿頭はげあたまをかきたいやうな当惑たうわくを感ずる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
初めから覚悟かくごしてゐた事なので長吉ちやうきちは黙つて首をたれて、何かにつけてすぐに「親一人子一人」とあはれツぽい事を云出いひだす母親の意見を聞いてゐた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)