乞丐こじき)” の例文
富有な旦那の冥利みょうりとして他人の書画会のためには千円からの金を棄てても自分は乞丐こじき画師の仲間となるのをあまんじなかったのであろう。
その世に称揚された美人好男いずれも千載一洗せぬ乞丐こじき的の人物だった由ミシュレーが言った——日本に調香の知識が開けたは
またいろいろなビラの下つた活動寫眞の横町から兩足のない乞丐こじきが兩手をついてのそりと出て來たことを覺えてゐる。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
すると、今までトルストイの手元ばかり見詰めてゐた乞丐こじきは、吃驚びつくりして跛足びつこをひきひき、宿無しいぬのやうに直ぐ前の歴山アレキサンダー公園の樹蔭こかげに逃げ込んでしまつた。
圭一郎は世の人々の同情にすがつて手を差伸べて日々の糧を求める乞丐こじきのやうに、毎日々々、あちこちの知名の文士を訪ねて膝を地に折つて談話を哀願した。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
土が残って居る。来年がある。昨日富豪となり明日あす乞丐こじきとなる市井しせい投機児とうきじをして勝手に翻筋斗とんぼをきらしめよ。彼愚なる官人をして学者をして随意に威張らしめよ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
或日商人某が柳原の通をゆくと一人の乞丐こじきこもの中に隠れて煙草を喫んでいるのを瞥見べっけんして、この禁煙令はいまに破れると見越みこしをつけて煙管を買占めたという実話がある。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
(ははあ、乞丐こじきをして歩く道士だな——李はこう思った。)瘠せた膝を、両腕で抱くようにして、その膝の上へ、ひげの長いあごをのせている。眼は開いているが、どこを見ているのかわからない。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(金鍔指すか薦被るかというは大名となるか乞丐こじきとなるかという意味の名古屋附近に行われる諺。)
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あはよくば、それは奇蹟的にでも闇に咲く女の中にさうした者を探し當てようとあちこちの魔窟を毎夜のやうにほつつき歩いたこともあつた、縱令よし乞丐こじきの子であつても介意かまふまい。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
トルストイは直ぐ眼の前に、跛足びつこ乞丐こじきが立つてゐるのを見た。施し物をしようとして、彼がポケツトに手を突込つきこむだ一刹那、要塞のなかから重い靴音を引摺りながら一にんの番兵が顔を出した。
俺はこゝから十町離れた乞丐こじき横町の裏屋の路次の奥の塵溜ごみためわきで生れたのだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)