並行へいこう)” の例文
旧字:竝行
老人はわずかにこしをまげて道と並行へいこうにそのまま谷をさがった。五、六歩行くとそこにすぐ小さな柾屋まさやがあった。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
玄関げんかんの出入口と書いてある硝子戸ガラスどを引くと寄宿舎のように長い廊下ろうかが一本横につらぬいていて、それに並行へいこうして、六じょうの部屋が三ツ、鳥の箱のように並んでいる。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
やがて余の船の頭が営口丸の尻より先へ出た。そうして、尻から胴の方へじりじりとげて行った。船は約一丁を隔ててほとんど並行へいこうの姿勢で進行している。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人のどなりと細君の足とはほとんど並行へいこうしたので、主人はしたうちして細君をながめたが、細君は、主人の小言こごとに顔の色もうごかさず、あえてまたいいわけもいわない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ですから地球ちきゆうが、かりにやまがなくて一面いちめん平地へいちであつたならば、それらのみどり地帶ちたいは、赤道せきどう中心ちゆうしんにこれに並行へいこうして、きたみなみとへうつくしいをえがいて、地球ちきゆういてゐるはずですが
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
バタシーを通り越して、手探てさぐりをしないばかりに向うの岡へ足を向けたが、岡の上は仕舞屋しもたやばかりである。同じような横町が幾筋も並行へいこうして、青天のもとでもまぎれやすい。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)