両端りょうはじ)” の例文
旧字:兩端
しかもいて言葉を出そうとすると、口へ出ないで鼻へ抜けそうになる。それを我慢すると、唇の両端りょうはじがむずむずして、小鼻がぴくついて来る。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もとの記憶には産土のわきを円曲えんきょくに曲がって、両端りょうはじには青い草がきれいにあざみやたんぽぽの花など咲いていた。小さなこの村にふさわしいのであった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
柏餅が一番いんです、布団の両端りょうはじを取って巻付けて両足をそくに立ってむこうの方に枕をえて、これなりにドンと寝ると、い塩梅に枕の処へ参りますが、そのかわり寝像ねぞうが悪いとあんがはみ出します
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
両足を湯壺ゆつぼの中にうんと踏ん張って、ぎゅうと手拭てぬぐいをしごいたと思ったら、両端りょうはじを握ったまま、ぴしゃりと、音を立ててはす膏切あぶらぎった背中へあてがった。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし愛という不可思議なものに両端りょうはじがあって、その高いはじには神聖な感じが働いて、低い端には性欲せいよくが動いているとすれば、私の愛はたしかにその高い極点をつらまえたものです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
葭簀よしずすきからのぞくと、奥には石で囲んだ池が見えた。その池の上には藤棚が釣ってあった。水の上に差し出された両端りょうはじを支える二本の棚柱たなばしらは池の中に埋まっていた。周囲まわりには躑躅つつじが多かった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)