両傍りょうわき)” の例文
旧字:兩傍
と云う、南無阿弥陀仏の両傍りょうわきに、あいあい傘の楽書のように、(となえろとなえろとなえろとなえろ、)と蛞蝓なめくじのごとくのたくり廻る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「しかし本当は、もっと複雑な構造をもっているんだ。今それをお目にかけよう。さあ、両傍りょうわきへ分れてください」
何にそれはうですよ。私の歩いていたのはH通りの右側で、前方から来た自動車の中央にグヰンがいて、その両傍りょうわきに年とった婦人と若い男が腰をかけていたからです。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
真中まんなかに、とがった銀杏返いちょうがえしで胸を突出しながら、額越ひたいごしじっとこちらをたのは、昨日きのうのお久という人で、その両傍りょうわきから躍り出した二人の少年が
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小屋のうちにはただこればかりでなく、両傍りょうわきうずたかく偉大な材木を積んであるが、そのかさは与吉のたけより高いので、わずか鋸屑おがくず降積ふりつもった上に、小さな身体からだ一ツ入れるより他に余地はない。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)