不念ぶねん)” の例文
お手前重々の不念ぶねんであるといって、重役たちから又もや手ひどく叱られたので、浅五郎もいよいよ恐縮してしまったのです。
半七捕物帳:42 仮面 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ハッ。私も実はこの不思議が解けずにおりまする。万一、私の不念ぶねんではなかったかと心得まして、まだ誰にも明かさずにおりまするが……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
姫様ひいさまから、御長男様まで、御三人とも、奇怪な死方をなされた上は、一応、軍勝図を秘伝致す牧へ御取調べがあっても、不念ぶねんとは申せますまい。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「それはハヤ不念ぶねんなこんだ。帯の結めさえ叩いときゃ、何がそれで姉様あねさまなり、母様おふくろさまなりの魂が入るもんだでエテめはどうすることもしえないでごす。」
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
以て同人住所御糺おたゞしの上御吟味成し下され候樣願ひ奉つりたく尤も私し儀市之丞が住所ぢうしよ名前等しかと承まはり置ざるは不念ぶねんの至り恐れ入り奉つり候呉々くれ/″\も御慈悲を以て是等の儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
アハハハ……これは身どもが不念ぶねんじゃった。貴殿の行末を思う余りに、要らざる事を尋ねた。『あらかじいてかゆきを待つ』
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それはハヤ不念ぶねんなこんだ。帯のむすびめさへたたいときや、何がそれで姉様なり、母様おふくろさまなりのたましいが入るもんだでエテめはどうすることもしえないでごす。」
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
誰にも言わずにうっかりしていたのはわたしが重々の不念ぶねんであったと、彼女は自分ひとりで罪をかぶってしまった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あるいは救助すくいの遅くして、下枝等は得三のために既に殺されしにあらざるか、遠くもあらぬ東京に住む身にて、かくまでの大事を知らず、今まで棄置きたる不念ぶねんさよ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
理窟をいえば、勿論この若侍の不念ぶねんに相違ない。重役たちの云う通り、それほど大切な詮議の宝を見つけたならば、なにをいても買い戻しの手だてをめぐらすべきであった。
半七捕物帳:42 仮面 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御覧の通りで御座います……これは私の不念ぶねんと申しましょうか、何と申しましょうか……ああ……何か事が起らねばよいがと、胸を痛めました事は一通りでは御座いませなんだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御主人は女性にょしょうなり、わしが一家を預りながら、飛んだ悪魔をお抱えあるをいさめなんだが不念ぶねん至極、何よりもまずこの月の入用いりようをまだ御手許おてもとから頂かぬに、かの悪魔めがくい道楽
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まことに不念ぶねんのようで恐れ入りますが、なにぶん手前どもでも困っている矢先でもあり、徳さんが万事をひき受けると申しますものですから、その上にくわしくも詮議いたしませんで……
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此の粗忽はわが不念ぶねんより起りし事なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)