下萌したもえ)” の例文
天地の運行に従って百草は下萌したもえをし、い立ち、花をつけ、実を結び、枯れる。人もまた天地の運行に従って、生れ、生長し、老い、死する。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
峠の上には雲雀ひばりが舞い、木立の中ではうぐいすが、気味の悪いほど長い息で鳴いている。そして木の下萌したもえは露に重く、馬の草鞋わらじはびっしょりと濡れる。
がしかし、南隅の寒紅梅かんこうばい一枝、月ぬるかすむ夜を待つもののように、やはり何処か下萌したもえの季節らしく、寒いうちにも春意を含んでふくらんでおります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しめよ春は田の下萌したもえに油ながれて日ぞ光りたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
冬にめぐむ下萌したもえの生熱と——
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
小高みになった藪蔭やぶかげのところに竹樋たけといを通した清水をすくいながら、握飯おむすびを郁太郎にも食べさせ、自分も食べていると、不意に後ろから人の足音があって、ガサガサッと藪の下萌したもえが鳴る。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湿しめよ春は田の下萌したもえに油ながれて日ぞ光りたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
下萌したもえや石をうごかすはかりごと
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あさみどり葦間の小田の下萌したもえに蛙鳴きたつ霧さめの前
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
下萌したもえの中を見てこう言いながら下りて行きました。
下萌したもえ大磐石だいばんじゃくをもたげたる
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)