一睡いっすい)” の例文
秀吉は、意外ともせず、ひとまず眠るがいい、疲れたであろう、そち達、一睡いっすいの後、あらためて寄ろうと云った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
館内には、館長さんや三人の宿直員が、一睡いっすいもしないで見はっていました。その人たちに知れぬように、あのたくさんの品物をおきかえるなんて、まったく不可能じゃありませんか。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その夜は特におきょうを読み夜中一睡いっすいもせずにテントの中で夜を明かしました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ゆうべ手枕で一睡いっすいしたのみであった勝頼は、もう全身をよろって、すこしも眠たげなものを顔に留めていなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……具足のまま、手枕かって、戦いのひまに、ごろりとやる一睡いっすいの味は、戦場ならではむさぼれぬ無上のものでな
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一睡いっすいをとって、やがてつと、諸将は、名島から松ヶ崎そのほか諸所の高地にかがりを焚き、また無数の旗じるしを、木々の枝にまでつけて、偽陣ぎじんていを作った。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光秀が、むなしくほらみねを去って、下鳥羽の本陣へ帰って来た頃——十一日の午頃ひるごろ——には、すでに一方の秀吉は尼ヶ崎に着いて、一睡いっすいの快をとっている時刻だったのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一睡いっすいに入る前に、たしなむ酒を仰飲あおったとみえ、座のかたわらに朱の大盃がかわいていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瀬兵衛清秀を始め、中川衆の猛者もさは、いわゆる当るにまかせて敵をほふるの勢いを示した。占めていた地勢にも利があったし、何といっても、佐久間勢の兵は、夜来、一睡いっすいもしていない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、故信長もいた旧山河、稲葉山の城を信孝に献じて、まず旧主家への誠忠を示し、つづいて、同月二十七日に開かれる予定となった清洲きよす会議の当日を悠々ゆうゆう一睡いっすいのあとに待っていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「風呂もやめておこう。ともあれ、左馬、一睡いっすいさせてくれ、慾はない」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから月の白い道を、露に濡れて、法隆寺の門に辿たどりついたのは、夜も更けたころで、境内の西園院さいおんいんの戸をたたき、そこに、何もかもそのままに一睡いっすいして、明る日、改めて、覚運僧都かくうんそうずに対面した。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生理的には、ゆうべは一睡いっすいもしていないし——それもある。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)