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ものあらそ
貰はんと行き見れば年が年中
物爭ひ一つなしたる事もなき家には
似氣なく親と子がさも
不快氣なる
面地して然も
泪を
お
美尾お
美尾と
目の
中へも
入れたき
思ひ、
近處合壁つゝき
合ひて
物爭ひに
口を
利く
者は
無かりし。
潰し
夫は又何事なるやと
惘れ
居たり一
體此吉五郎と云者は
極正直にて人のよき
事竟に一度も人と
物爭ひなどしたる
試しなく町方住居の者には
稀なる故皆々近所にても
佛吉々々と
渾名なす程の者なれば今御奉行樣が
直の
御調べと聞て
暫時無言なりしが
稍々震へ聲を