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ばうをく
翌年一月、
親類見舞に、
夫人が
上京する。ついでに、
茅屋に
立寄るといふ
音信をうけた。ところで、いま
更狼狽したのは、その
時の
厚意の
萬分の
一に
報ゆるのに
手段がなかつたためである。
祥瑞の
江村は暮れかかつた。
藍色の柳、藍色の橋、藍色の
茅屋、藍色の水、藍色の
漁人、藍色の
芦荻。——すべてが
稍黒ずんだ藍色の底に沈んだ時、忽ち
白々と舞ひ
上るお前たち三羽の翼の色。
われはこれより
茅屋のうちなる寡婦孤兒の憐むべき
生活を敍し、
賑恤の必要と其效果とに及べり。