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はなしずき
これら
凡百の話題を
緯にして、
話好の伯母さんは自身四十九年間の一切の記憶の絲を
經に入れる。
乗合に
話好の
爺様が
居て、それが言ッたよ。上手な船頭は手先で
漕ぐ。
巧者なのは眼で
漕ぐ。それが名人となると、
肚で
漕ぐッ。これは
大いにそうだろう。沖で
暴風でも
吃ッた時には、一寸先は闇だ。
此處の
主も
多辨にや
咳勿躰らしくして
長々と
物語り
出ぬ、
祖父なりし
人が
將軍家の
覺え
淺からざりしこと、
今一
足にて
諸侯の
列にも
加へ
給ふべかりしを
不幸短命にして
病沒せしとか