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のりいだ
つと
乗出してその
面に
瞳を据ゑられたる直行は、鬼気に襲はれて
忽ち寒く
戦けるなり。
熟くと見入る
眼を放つと共に、老女は
皺手に顔を
掩ひて
潜々と
泣出せり。
いとも危うく身を遁れて、泰助は振返り、
屹と
高楼を見上ぐれば、得三、高田相並んで、窓より半身を
乗出し、
逆落しに狙う短銃の
弾丸は続いて飛来らん。
欺き天神丸の
上乘して
上方筋へ
赴かんと
胸に
巧み足を早めて西濱に
到ければ天神丸ははや
乘出さん時なり吉兵衞は
大音上オヽイ/\と船を
招けば
船頭杢右衞門が聞つけ何事ならんと
端舟を
乘出し
相良の
城下へと急ぎけり