乗出のりいだ)” の例文
旧字:乘出
いと恐しき声にもおじず、お貞は一膝乗出のりいだして、看病疲れに繕わざる、乱れし衣紋えもんを繕いながら、胸を張りて、おもてを差向け
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、開巻第一のページから、ただ茫洋として、艫舵ろだなき船の大洋に乗出のりいだせしがごとく、どこから手のつけようもなく、あきれにあきれているほかはなかった。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
つと乗出のりいだしてそのおもてひとみを据ゑられたる直行は、鬼気に襲はれてたちまち寒くをののけるなり。つくづくと見入るまなこを放つと共に、老女は皺手しわでに顔をおほひて潜々さめざめ泣出なきいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いとも危うく身を遁れて、泰助は振返り、きっ高楼たかどのを見上ぐれば、得三、高田相並んで、窓より半身を乗出のりいだし、逆落さかおとしに狙う短銃の弾丸たまは続いて飛来らん。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)