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つたかつら
堪て吉兵衞
漸々起上り大事を
抱へし身の爰にて
空しく
凍死んも
殘念なりと氣を
勵まし四方を
見廻せば
蔦葛下りて
有を見付是ぞ天の
與へなりと二
品の包みを
脊負纒ふ葛を
高い
石垣に
蔦葛がからみついて、それが
真紅に染まっているあんばいなど得も言われぬ趣でした。
と手水鉢の柄杓を口に
啣えて、土手の甚藏が
蔦蔓に掴まって段々下りて行くと、ちょうど松柏の
根方の
匍っている処に足掛りを
拵えて、段々と
谷間へ下りまして
足掛りの無い処を狙いすまして新吉が腰に
帯したる
小刀を引抜き、力一ぱいにプツリと
藤蔓蔦蔓を切ると、ズル/\ズーッと
真逆さまに落ちましたが、
何うして松柏の根方は張っているし