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そばがら
そのころ、与一は
木綿の掛蒲団一枚と
熟柿のような、
蕎麦殻のはいった枕を一ツ持っていた。
よく人が生蕎麦は色が黒いと申しますけれどもあれは
蕎麦殻の交った三番粉位を
彼はいきなり
蕎麥幹の
束を
大きな
足で
蹴つた。
彼は
更に
短い
竹の
棒を
持つて
行つてきつと
力を
極めて
地に
突き
透した。
冬になると
霜柱が
立つので
庭へはみんな
藁屑だの
蕎麥幹だのが一
杯に
敷かれる。それが
庭葢である。
霜柱が
庭から
先の
桑畑にぐらり/\と
倒れつゝある。