-
トップ
>
-
こばんがた
手の甲の血を
吮ひつつ富山は不快なる
面色して
設の席に着きぬ。
予て用意したれば、
海老茶の
紋縮緬の
裀の
傍に
七宝焼の
小判形の
大手炉を置きて、
蒔絵の
吸物膳をさへ据ゑたるなり。
木尻座の
筵に、ゆたかに、
角のある
小判形にこしらへて
積んであつた
餅を、
一枚、もろ
手、
前脚で
抱込むと、ひよいと
飜して、
頭に
乘せて、
一つ
輕く
蜿つて、
伸びざまにもとの
障子の
穴へ
消える。
小判形で
直径七尺以上のものがあるという。