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けんざや
と、いきなり
左の
方でガチヤガチヤと
劍鞘の
鳴る
音がした。ゴソツと
靴の
地にこすれる
音がした。
同時に「ウウツ‥‥」と
唸る
人聲がした。
私がぎよツとして
振り
返る
隙もなかつた。
まるで
酒場の
醉ひどれのやうな
兵士の
集團は
濕つた
路上に
重い
靴を
引き
摺りながら、
革具をぎゆつぎゆつ
軋らせながら
劍鞘を
互にかち
合せながら、
折折寢言のやうな
唸り
聲を
立てながら
先方でも声に応じて駈けて来た。が、惨憺たる
此場の
光景を見て、
何れも
霎時は
呆気に取られた。巡査は
剣鞘を握って進み出た。