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かいちやう
其の
春、
攝州多田院に
開帳があつて、
玄竹は
病家の
隙を
見た
上、一
日其の
參詣に
行きたいと
思つてゐた。
五月山の
木が一
本々々數へられるやうになると、
池田の
町は
直ぐ
長い
坂の
下に
見おろされた。
此處からはもう
多田院へ一
里、
開帳の
賑ひは、この
小都會をもざわつかしてゐた。
權山といふ
峠は、
低いながらも、
老人にはだいぶ
喘いで
越さねばならなかつた。
峠の
頂上からは、
多田院の
開帳の
太鼓の
音が
聞えて、
大幟が
松並木の
奧に、
白く
上の
方だけ
見せてゐた。