村里むらざと)” の例文
利根川とねがはながれ汎濫はんらんして、に、はたけに、村里むらざとに、みづ引殘ひきのこつて、つきとしぎてもれないで、のまゝ溜水たまりみづつたのがあります。……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
皆さんが疎開そかい村里むらざとにおいて、直接見ているものをならべくらべてみても、ほとんと昔からの変遷へんせんの、すべての段階を知ることができるのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
またいと深き恩惠めぐみわが上に輝きたれば、我そのまはりの村里むらざとをして、世界を惑はしゝ不淨の禮拜らいはいのがれしむ 四三—四五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私は村里むらざとの小さな家で、降る雨をながめて乾杏子をたべる、三つぶの甘みを味つてゐるうち、遠い国の宮殿の夢をみてゐた、めざめてみれば何か物たりない。
乾あんず (新字旧仮名) / 片山広子(著)
それほど仲よしの村里むらざとへにわかに雨が来ました時は、おたがいにとなりの国の家へ飛びこむものもあれば、からかさもすぼめて国境くにざかいを駆けて通るものもありました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
第七 一ヶげつ五六かなら村里むらざとはなれたる山林さんりんあるひ海濱はまべで、四五みち歩行ほかうすべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
随分ずいぶん遙々はるばるの旅だつたけれども、時計と云ふものを持たないので、何時頃か、それは分らぬ。もっと村里むらざとを遠く離れたとうげの宿で、鐘の声など聞えやうが無い。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たとえば東京の周囲の村里むらざとから、北は福島・宮城の二県まで、西は甲州と信州の一部、東海道すじは愛知県の東部にかけて、コビルという名はなくてその代りにコジュウハン
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「わが愛するものよ、われら田舎にくだり、村里むらざとに宿らん」
乾あんず (新字旧仮名) / 片山広子(著)
御身おみたちもよく覚えて、お社近やしろぢか村里むらざとの、嫁、嬶々かか、娘の見せしめにもし、かつはこおりへも町へも触れい。布気田ふげた
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青森県の東のはし八戸市はちのへしの附近の村里むらざとでは、こんな話になっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
村里むらざとの雨降る日も愉しい。
乾あんず (新字旧仮名) / 片山広子(著)
ひとつは村里むらざとちかづいたとおもふまゝに、里心さとごころがついて、きふ人懷ひとなつかしさにへないのと、ひとつは、みづのために前途ゆくてたれて、わたるにはしのない憂慮きづかはしさとである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たのまれたこと手廻てまはしに用済ようずみとつたでな、翌朝あけのあさすぐにも、此処こゝ出発しゆつぱつおもふたが、なにる……温泉宿おんせんやど村里むらざと托鉢たくはつして、なにとなく、ふら/\とおくつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大沼おほぬま刻限こくげんも、村里むらざとかはう、やがて丑満うしみつおもふ、昨夜ゆふべころ、ソレ此処こゝで、とあみつたが、ばんうへ引揚ひきあげるまでもなく、足代あじろうへからみづのぞくと歴然あり/\またかほうつつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はじめは双六すごろくの絵を敷いた如く、城が見え、町が見え、ぼうとかすんで村里むらざとも見えた。やがて渾沌こんとん瞑々めいめいとして風の鳴るのを聞くと、はてしも知らぬ渺々びょうびょうたる海の上をけるのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
陽炎かげらふは、しかく、村里むらざと町家まちやる、あやしき蜘蛛くもみだれた、幻影まぼろしのやうなものではく、あだか練絹ねりぎぬいたやうで、てふ/\のふわ/\と呼吸いきが、そのはねなりに飜々ひら/\ひろがる風情ふぜい
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山家やまが村里むらざと薄紅うすくれなゐ蕎麥そばきりあはしげれるなかに、うづらけば山鳩やまばとこだまする。掛稻かけいねあたゝかう、かぶらはや初霜はつしもけて、細流せゝらぎまた杜若かきつばたひるつきわたかりは、また戀衣こひぎぬ縫目ぬひめにこそ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
菖蒲あやめ杜若かきつばた此處こゝばかりではない、前日ぜんじつ——前々日ぜん/\じつ一見いつけんした、平泉ひらいづみにも、松島まつしまにも、村里むらざと小川をがは家々いへ/\の、背戸せど井戸端ゐどばた野中のなかいけみづあるところには、大方おほかたのゆかりの姿すがたのないのはなかつた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まどもやゝ黄昏たそがれて、村里むらざとかきかるくぱら/\とくれなゐはやしまぎれて、さま/″\のもののみどり黄色きいろに、藁屋根わらやねかばなるもあかくさかげしづむ、そこきりつやして、つゆもこぼさす、しもかず
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こつさいりんしんかとてしばをかつぎて、あねさんかぶりにしたる村里むらざと女房にようばうむすめの、あさまちづるさまは、きやう花賣はなうり風情ふぜいなるべし。むつなゝきのこすゝききとめて、すさみにてるも風情ふぜいあり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)