取出とりいだ)” の例文
昨夜ゆふべは夜もすがら静にねぶりて、今朝は誰れより一はな懸けに目を覚し、顔を洗ひ髪をでつけて着物もみづから気に入りしを取出とりいだ
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と年増は紙幣さつ取出とりいだして二三枚握らすれば、車夫はにわかに笑顔になり、「ちと、もし、御手伝を致しましょう。」現金な野郎なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ハンカチイフもて抑へければ、絹の白きに柘榴ざくろ花弁はなびらの如く附きたるに、貴婦人は懐鏡ふところかがみ取出とりいだして、むことの過ぎしゆゑぞと知りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
風呂敷を解いて小さい徳利を取出とりいだして、くちの堅いのを抜きまして、首を横にしてタラ/\/\と彼是かれこれ茶椀に半分程入れて
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくし何氣なにげなく衣袋ポツケツトさぐつて、双眼鏡さうがんきやう取出とりいだし、あはせてほよくその甲板かんぱん工合ぐあひやうとする、丁度ちやうど此時このとき先方むかふふねでも、一個ひとり船員せんゐんらしいをとこ
取出とりいだし始て參上仕さんじやうつかまつり内々御聞申度事御座るに付是にてさけさかな御買下おかひくださるべし輕少すこしながら御土産おみやげなりと申故權三も一向に樣子やうす了解わからねば辭退じたいするを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このも一文を懐中にせしままおそるおそる取出とりいだして閲覧を請ひけるに青軒子仔細らしく打見て墨を濃く摺り書体を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかるに、中途ちうとえて大瀧氏おほたきしあらはれて、懷中ふところから磨製石斧ませいせきふ完全くわんぜんちかきを取出とりいだし、坪井博士つぼゐはかせまへして。
やがて彼れ衣嚢かくしを探りいとふとやかなる嗅煙草かぎたばこの箱を取出とりいだし幾度か鼻に当て我を忘れて其香気をめずる如くに見せかくる、れど余はかねてより彼れに此癖あるを知れり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
このとき程済は辛くもかたみを砕き得て、篋中きょうちゅうの物を取出とりいだす。でたる物はそも何ぞ。釈門しゃくもんの人ならでたれかは要すべき、大内などには有るべくも無き度牒どちょうというもの三ちょうありたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(手早く帽とジャケツとを脱ぎ捨て、大いなる白の前掛を取出とりいだして掛く。)
と机の抽斗ひきだしより西洋紙の手帖を取出とりいだしぬ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
トお勢は団扇うちわ取出とりいだして文三に勧め
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさまし、かほあらかみでつけて着物きものもみづからりしを取出とりいだ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれはこの惨憺みじめさと溽熱むしあつさとにおもてしわめつつ、手荷物のかばんうちより何やらん取出とりいだして、忙々いそがわしく立去らむとしたりしが、たちまち左右をかえりみ
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくても貫一はひざくづさで、巻莨入まきたばこいれ取出とりいだせしが、生憎あやにく一本の莨もあらざりければ、手を鳴さんとするを、満枝はさきんじて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
掲げ其中より取出とりいだしたる柳樽やなぎだる家内かない喜多留きたるしるしゝは妻をめとるの祝言にやあさ白髮しらがとかい附しは麻の如くにいとすぐとも白髮しらがまで消光くらすなる可し其のほかするめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
秋の雨しとしとと降りそそぎて、虫の次第に消え行く郊外の佗住居わびずまいに、みつかれたる昼下ひるさがり、尋ねきたる友もなきまま、独りひそかに浮世絵取出とりいだして眺むれば、ああ
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昔はお武家が大小をしてお歩きなすったものですが、廃刀以来幾星霜を経たる今日に至って、お虫干の時か何かに、刀箪笥から長いやつ取出とりいだして、これを兵児帯へこおびへ帯して見るが
取出とりいだし、大急ぎにてかき始む。為事に熱中しつつ。
たもとより取出とりいだして再び三たび口をぬぐう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さびしきまゝにこと取出とりいだひとこのみのきよくかなでるに、れと調てうあはれにりて、いかにするともくにえず、なみだふりこぼしておしやりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……どれ、(樹の蔭にひとむら生茂おいしげりたるすすきの中より、組立くみたてに交叉こうさしたる三脚の竹を取出とりいだしてゑ、次に、其上そのうえまるき板を置き、卓子テエブルの如くす。)
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は外套オバコオト衣兜かくしより一袋のボンボンを取出とりいだして火燵こたつの上に置けば、余力はずみに袋の口はゆるみて、紅白の玉は珊々さらさら乱出みだれいでぬ。こは宮の最も好める菓子なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
委く承知なされぬ故なり兎角とかくに知ぬ事は疑心の發るもの然ば拙僧せつそう詳細くはしく認めて御目に掛んと筆を取出とりいだし佐州相川郡尾島村淨覺院門前に捨子すてごに成せられしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
秋の雨しとしとと降りそそぎて、虫の次第に消え行く郊外の侘住居わびずまいに、みつかれたる昼下ひるさがり、尋ねきたる友もなきまま、ひとひそかに浮世絵取出とりいだしてながむれば、ああ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と治平は真青まっさおになりブル/\慄え出すを見て、ガラリと鞄をほうり出し、どたアりと大胡座おおあぐらをかいて、かくしからハンケーチを取出とりいだし、チンとはなをかんで物をも云わず巻煙草に火を移し
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うろうろ四辺あたりを見廻すひまに、時彦は土間に立ちたるまま、粛然として帯の間より、懐中時計を取出とりいだし、丁寧に打視うちながめて、少年を仰ぎ見んともせず
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なげくべきことならずと嫣然につこみてしづかに取出とりいだ料紙りやうしすゞりすみすりながして筆先ふでさきあらためつ、がすふみれ/\がちて明日あす記念かたみ名殘なごり名筆めいひつ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と見れば葡萄棚ありてあたり薄暗し。娘は奥まりたる離座敷はなれざしきとも覚しき一間ひとまの障子外より押開きてづかづかと内にあがり破れしふすまより夜のもの取出とりいだしてすすけたる畳の上に敷きのべたり。
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
差添のお役人が懐から仰せ渡されがき取出とりいだして読上げます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こう老爺様じいさんまあ待ちねえ、婆様ばあさんちょいと。」と呼留めて、売溜うりだめの財布より銅貨四銭取出とりいだし、二人の手にわかち与えて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広小路にいづれば車もあり、阿関は紙入れより紙幣いくらか取出とりいだして小菊の紙にしほらしく包みて、録さんこれは誠に失礼なれど鼻紙なりとも買つて下され
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
寝屋ねやの屏風太鼓張たいこばりふすまなぞ破れたるを、妻と二人して今までは互に秘置ひめおきける古きふみ反古ほご取出とりいだして読返しながら張りつくろふ楽しみもまた大厦高楼たいかこうろうを家とする富貴ふうきの人の窺知うかがいしるべからざる所なるべし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……どれ、(樹の蔭に一むら生茂おいしげりたるすすきの中より、組立てに交叉こうさしたる三脚の竹を取出とりいだして据え、次に、その上のまろき板を置き、卓子テェブルのごとくす。)
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
廣小路ひろこうぢいづればくるまもあり、阿關おせき紙入かみいれより紙幣しへいいくらか取出とりいだして小菊こぎくかみにしほらしくつゝみて、ろくさんこれはまこと失禮しつれいなれど鼻紙はながみなりともつてくだされ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
綾子、袱紗包ふくさづつみを開きて、昨日きのうの毎晩新聞を取出とりいだし、「時に。」と開直りて、「ま、これを。」と仔細しさいありげ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
池のほとりの松が根につまづきて赤土道に手をつきたれば、羽織のたもとも泥に成りて見にくかりしを、居あはせたる美登利みかねて我がくれないの絹はんけちを取出とりいだ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ある薄月夜にあまたの仲間の者と共に浜へ越ゆる境木峠さかいぎとうげを行くとて、また笛を取出とりいだして吹きすさみつつ
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふうときて取出とりいだせば一尋ひとひろあまりにふでのあやもなく、有難ありがたこと數々かず/\かたじけなきこと山々やま/\おもふ、したふ、わすれがたし、なみだむねほのほ此等これら文字もじ縱横じゆうわうらして
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
古くより持つたへし錦絵かずかず取出とりいだし、褒めらるるを嬉しく美登利さん昔しの羽子板を見せよう、これは己れのかかさんがおやしきに奉公してゐる頃いただいたのだとさ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左手ゆんでひさげたる革鞄かばんうちより、ちいさき旗を取出とりいだして、臆面もなくお貞の前に差出しつ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
封じ目ときて取出とりいだせば一尋ひとひろあまりに筆のあやもなく、有難き事の数々、かたじけなき事の山々、思ふ、したふ、忘れがたし、血の涙、胸の炎、これ等の文字もんじ縦横じうわうに散らして
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
月いと清うさしいでて、葉裏をすかして照らすにぞ、偶然ふと思い付く頬の三日月、またあらわれはせざるかと、懐中鏡を取出とりいだせば、きらりと輝く照魔鏡に怪しき人影映りけるにぞ、はっと鏡を取落せり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羽織はをりたもとどろりてにくかりしを、あはせたる美登利みどりみかねてくれないきぬはんけちを取出とりいだし、これにておきなされと介抱かいほうをなしけるに、友達ともだちなかなる嫉妬やきもちつけて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と菓子皿を取出とりいだして、盛りたる羊羹ようかん楊枝ようじを添え
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
押入れ探ぐつて何やらの小風呂敷取出とりいだし、これはこの子の寐間着ねまきあはせ、はらがけと三尺だけ貰つて行まする、御酒の上といふでもなければ、めての思案もありますまいけれど
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火鉢ひばちくろりてはいそと轉々ころ/\すさまじく、まだ如月きさらぎ小夜嵐さよあらしひきまどの明放あけばなしよりりてことえがたし、いかなるゆゑともおもはれぬに洋燈らんぷ取出とりいだしてつく/″\と思案しあんるれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふるくよりもちつたへし錦繪にしきゑかず/\取出とりいだし、めらるゝをうれしく美登利みどりさんむかしの羽子板はごいたせよう、これはれのかゝさんがおやしき奉公ほうこうしてころいたゞいたのだとさ、をかしいではいかこのおほきいこと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
押入おしいぐつてなにやらの小風呂敷こぶろしき取出とりいだし、これは此子このこ寐間着ねまきあはせ、はらがけと三じやくだけもらつてゆきまする、御酒ごしゆうへといふでもなければ、めての思案しあんもありますまいけれど、よくかんがへてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)