鶯色うぐいすいろ)” の例文
鶯色うぐいすいろのコートに、お定りのきつね襟巻えりまきをして、真赤まっかなハンドバッグをクリーム色の手袋のはまった優雅な両手でジッと押さえていた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鶯色うぐいすいろのリボン、繻珍しゅちん鼻緒はなお、おろし立ての白足袋しろたび、それを見ると、もうその胸はなんとなくときめいて、そのくせどうのこうのと言うのでもないが、ただうれしく、そわそわして
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
でも鶯色うぐいすいろのドレスが美しい身体からだによく似合って、輝くばかりの美貌は人目をかないではいなかったし、兄の守も、同じ血筋の美青年で、金釦きんボタンの制服姿も意気に見えたのに比べて、殿村京子だけは
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
のさ/\と魚の食べ残しの鶯色うぐいすいろの皿を片付けて行く直助の後姿を、かの女はあわれに思つたが我慢した。毎日の川魚探しに直助の母の手造りのこん無地の薄綿の肩のあいが陽やけしたのか少しげてゐた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
当時貞雄さんはまだ五六歳の幼童で膝までしかない鶯色うぐいすいろのセルの着物を着た脆弱そうな少年だった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鶯色うぐいすいろ緞子どんす垂幕たれまく、「美人戯毬図びじんぎきゅうず」とした壁掛かべがけの刺繍ししゅう、さては誤って彼がふちいた花瓶までが、かつて覚えていたと同じ場所に、何事もなかったかのように澄しかえって並んでいたのだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)