鳴海絞なるみしぼ)” の例文
その自然木の彎曲わんきょくした一端に、鳴海絞なるみしぼりの兵児帯へこおびが、薩摩さつま強弓ごうきゅうに新しく張ったゆみづるのごとくぴんと薄を押し分けて、先は谷の中にかくれている。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……何だろうと思って、そっと近寄って見ると、鳴海絞なるみしぼりの黒っぽい浴衣を着た里春が、片袖を顔へひき当てるようにして檐下のきしたに寝ているんです。
おつたは幾年いくねん以前まへ仕立したてえる滅多めつたにない大形おほがた鳴海絞なるみしぼりの浴衣ゆかた片肌脱かたはだぬぎにしてひだり袖口そでぐちがだらりとひざしたまでれてる。すそ片隅かたすみ端折はしよつてそとからおびはさんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一枚は上布じょうふ、一枚は鳴海絞なるみしぼり、どちらも新しいし、安い品ではないようである。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それがおわると、鳴海絞なるみしぼりの着物に、表黒白裏の鯨帯をしめた女の踊子が十人ばかり出て来て