鬼事おにごと)” の例文
子供の群は、寺の墓場に近い、大きな胡桃くるみの木の下で遊んでいた。十五六をかしらに八九歳を下に鬼事おにごとをやっていると、彼方あっちから
(新字新仮名) / 小川未明(著)
昼飯ひるめしは小川屋から運んで来てくれた。正午の休みに生徒らはみんな運動場に出て遊んだ。ぶらんこに乗るものもあれば、鬼事おにごとをするものもある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
(この場合において基は鬼事おにごとのおかのごとし)故に走者はなるべく球の自己に遠かる時を見て疾走しっそうして線を通過すべし。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
前なる者馬を引き走り避けて後なる者射る、虎回れば後なる者またしかす、虎多しといえどもたちどころに尽すべしとは、虎を相手に鬼事おにごとするようで余りに容易な言いようだが
子供が鬼事おにごとなどをする時に「その手は食わぬ」などとよくいうものである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
障子も一時は黄色に見えたが漸次ぜんじ薄暗くなって、子供等の鬼事おにごとの声も遠ざかってしまうと、遥かにボーッ、ボーッと蒸汽船の笛の音が聞える。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鬼事おにごとの群れに交って、女の生徒につかまえられて、前掛けで眼かくしをさせられることもある。また生徒を集めていっしょになって唱歌をうたうことなどもあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
食事がすめばサア鬼ごとといふので子供などはほおぺたの飯粒も取りあへず一度に立つて行く。女子供は普通に鬼事おにごと摘草つみくさかをやる。それで夕刻まで遊んで帰るのである。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鎮守の境内で、鬼事おにごとを為る時、重右衛門は睾丸が大いものだから、いつも十分に駆ける事が出来ず、始終中しよつちゆう鬼にばかりつて居たといふ事と、山茱萸やまぐみを採りに三峯に行つた時
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
然るに、たまたま、この子守唄を聞くと、不思議にも、幼児の時分に帰ったような、まだ、その赤い夕日を見て鬼事おにごとをして遊んでいたのは昨日のことのような、純な、気持ちになってしまう。
単純な詩形を思う (新字新仮名) / 小川未明(著)