高野槇こうやまき)” の例文
新字:高野槙
その建物のまわりには、栃だの欅だの檜だの、羅漢柏るすびだの落葉松からまつだの高野槇こうやまきだのの、すぐれた木地が積み重ねられ、丘のような形をなしている。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
檜木ひのきさわら明檜あすひ高野槇こうやまきねずこ——これを木曾では五木ごぼくという。そういう樹木の生長する森林の方はことに山も深い。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
庭には高野槇こうやまきの生垣で仕切がしてあり、その木戸にも掛金が掛けたままになっているが、石川孝之介はその掛金を外して、勝手に入って来たのであった。
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
没義道もぎどうに頭を切り取られた高野槇こうやまきが二本もとの姿で台所前に立っている、その二本に竿ざおを渡して小さな襦袢じゅばん
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
広栄は後の煙草たばこけて庭の方へやるともなしに眼をやった。白沙を敷いた広い庭には高野槇こうやまきがあり、えのきがあり、かえでがあり、ぼくになったまさきなどがあって微陽うすびが射していた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黒板塀に黒鉄の忍返し、姫小松と黒部をぎつけた腰舞良こしまいらの枝折戸から根府川の飛石がずっと泉水のほうへつづいている。桐のずんどに高野槇こうやまき。かさ木の梅の苔にもさびを見せた数寄すきな庭。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
広巳はそのまま庭へ飛びおりて庭の上へつらつらと眼をやった。かえでの老木の近くにある高野槇こうやまきの根方に、あの蛇がいて鎌首をもったてながら針のような赤い舌を出していた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今さらのように豊富な檜木ひのきさわら明檜あすひ高野槇こうやまき、それからねずこなどの繁茂する森林地帯の深さに驚き、それらのみずみずしい五木がみな享保年代からの御停止木であるにも驚き
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
言って見れば、檜木ひのきさわら明檜あすひ高野槇こうやまきねずこの五種類が尾張藩の厳重な保護のもとにあったのだ。半蔵らは、名古屋から出張している諸役人の心が絶えずこの森林地帯に働いていることを知っていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)