うまやじ)” の例文
旧字:
「昔平ノ重衡しげひらは、囚人めしゅうどとして東海道を、関東へ降る道すがら、何んとかいううまやじで白拍子の千寿と……で、わしも……行こう、亀千代」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
声なき声は、街道すじのうまやじへ駅へ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
街道を一方へ辿って行けば、俚謡うたに詠まれている関所があり、更に一方へ辿って行けば、沓掛くつかけの古風のうまやじがあった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
飛騨の萩村は街道筋における、相当に賑やかなうまやじであって、旅籠はたご屋などにもよいものがあった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
幸福に、幸福に、幸福に! ……でも私達は林や野や、小さいうまやじ宿しゅくで住む! でもちっとも違いはない。幸福にさえ暮らそうとしたら……きっと幸福にくらすことが出来る!
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わけても藪原のうまやじは、姿を見ない人までも名にあこがれて通って来るほど美しい遊女が現われてからは、人の出入りもしげくなり、自然に商売あきないも繁昌して、長閑のどかさを一層長閑にした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お前さんのお話を聞いておりますと、どうやら繁華な都よりも、街道筋の宿やうまやじのほうに、権威を認めておりますようで。少し変ではございませんかな。物の数にも入れないなどとは?」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
数日前に萩村のうまやじの、柏屋という旅籠はたご屋から、乗り出した駕籠に相違ない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はいはい私ども一座の者は、東海道の宿やうまやじを、お得意にしておりまして、ご贔屓ひいき様もたくさんにあります。江戸や浪華なにわや京などという、そのような繁華な都などは、物の数にも入れておりませぬ
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)