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香煙
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こうえん
このとき、はや衆僧は、
如海に引率されて、奥の法要の道場へ乗込んでいた。
香煙るると
磬を合図に
礼拝する。
紫の
香煙が、ひともとすなおに
立昇って、
南向きの
座敷は、
硝子張の
中のように
暖かい。
二本の
朱蝋燭をあかあかと
灯させたり、また、
紙銭や花をかざり、その間には
香煙縷々と
焚いて、およそ兄の武大が生前好きだった
種々な供物は、なにくれとなく
やがて、
香煙を
揺がせて、
恐る
恐る
襖の
間から
首を
差出したのは、
弟子の
菊彌だった。