養親やしないおや)” の例文
何時いつのほどにか来りけん、これなん黄金丸が養親やしないおや牡牛おうし文角ぶんかくなりけるにぞ。「これはこれは」トばかりにて、二匹は再びきもを消しぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
しま養親やしないおやの口から、近いうちに自分に入婿いりむこの来るよしをほのめかされた時に、彼女の頭脳あたまには、まだ何等の分明はっきりした考えも起って来なかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ついに化して蜂となって養親やしないおやの跡を継ぐのであろうなどと想像をたくましうして、似我蜂じがばちという名前をつけたのである。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
われはなんじ毒牙どくがにかかり、非業にも最期をとげたる、月丸が遺児わすれがたみ、黄金丸といふ犬なり。彼時かのときわれ母の胎内にありしが、そののち養親やしないおや文角ぬしに、委敷くわしき事は聞きて知りつ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
紙漉場かみすきばなどをもって、細々と暮していた養家では、その頃不思議な利得があって、にわかに身代が太り、地所などをどしどし買入れた。お島は養親やしないおやの口から、時々その折の不思議をれ聞いた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「われこのままに不具の犬とならば、年頃の宿願いつかかなへん。この宿願叶はずば、養親やしないおやなる文角ぬしに、また合すべきおもてなし」ト、切歯はぎしりして掻口説かきくどくに、鷲郎もその心中すいしやりて
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)