題簽だいせん)” の例文
そこの机の上から取ったのだろう「妙法寺記みょうほうじき」という題簽だいせんで、半年ほどまえに良人が御菩提寺ごぼだいじから借りて来て筆写しているものだった。
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
見ると「孟徳新書」という題簽だいせんがついている。曹操は、皮肉を感じて、むッとしたが、いずれは、打ち殺さんという肚があるので、さりげなく
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある日小川町通の古本屋で『精神啓微』と題簽だいせんした書物を買って、めずらしそうにひろい読みしたことを今想起する。
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
やあシミの巣だとかシミの何んだとか言って時には紙魚繁昌記などと書物の題簽だいせんまでを賑わす名とも成り、名誉と言えば名誉だともいえない事はないでもないが
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
價を論ずれども成らざりしかば、思ひあきらめて立ち去らんとしたる時、一書の題簽だいせんに「ヂヰナ、コメヂア、ヂ、ダンテ」(ダンテが神曲)と云へるあるを見出しつ。
親しく圓朝の話術に接し、ことごとく傾倒されていた故を以て我が江戸文学の恩師川柳久良伎翁には、見事な題簽だいせんを書いていただいた。好箇の記念たらしめたかったからである。
小説 円朝 あとがき (新字新仮名) / 正岡容(著)
「とにかく使いをやってくれ」と云いながら、五郎太はいま取り出した本の題簽だいせんを読んだ、「古今和歌集、巻の五、秋の歌か」
古今集巻之五 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
だがその表題の題簽だいせんも、年経て文字もかすかに手摺てずれてしまい、江戸時代になってから、何代目かの所蔵者が、またその横に、題簽だいせんを貼り加えた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竜右衛門ははたはたと団扇を動かし、それからとつぜん、自分の読んでいる書物を取り、表紙を返して、題簽だいせんを見た。
女は同じ物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
という題簽だいせんがついていた。不識庵とは、いうまでもなく、上杉謙信のことである。書物の内容は、謙信が自身の日用の修身を書きならべて、家臣へ示したものであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
買って来る書物はたいていいたんでいる、頁が千切れたり、端がまくれたり、綴糸とじいとがほつれたり表紙が破れたり、題簽だいせんの無いものなども少なくない、それを丹念に直して、好みの装幀をして
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ああいう公卿も居る時世かと、わしもまた初めて知った。ひそかに、やッたところ、鷹野の狩装かりよそおいはしていたが、獲物は持たぬ。そのうえ、手にひらいていた漢書の題簽だいせんには“資治通鑑しじつがん”としてあった」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤右衛門はその表紙の「松の花」という題簽だいせんをあらためて見なおした、松の緑はかわらぬみさおの色だ、そこにえらまれたのはあらゆる苦難とたたかった女性たちの記録である、いまの世にひろめ
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
題簽だいせんは十兵衛の自筆でないが、最初の一枚の自序を見ると
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
題簽だいせんには、孟徳新書もうとくしんしょとある。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)