すみやか)” の例文
輪王寺宮慈性親王病すみやかなるをもて、能久親王職をがせ給ふ。いで慈性親王薨ぜさせ給ふ。将軍徳川慶喜政権を朝廷に還しまつる。
能久親王年譜 (新字旧仮名) / 森鴎外森林太郎(著)
わたくしはさきに榛軒がやまひすみやかであつた時、物を安石におくつたことを記した。そして当時未だ此人の身上を詳にしなかつたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
十五日より病はすみやかになつた。当時治療に任じた医家五人が連署して江戸に送つた報告書を此に抄出する。十五日後。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これより推せば、月今宵の句も同じ年の中秋に成つて、後十四日にしてやまひすみやかなるに至つたのではなからうか。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
頼山陽は茶山の病すみやかなるを聞いて、京都より馳せ至つた。しかし葬儀にだに会ふことを得なかつた。「聞病趨千里。中途得訃音。不能同執※。顧悔晩揚鞭。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
輔之には登勢とせというむすめ一人ひとりしかなかった。そこでやまいすみやかなるとき、信濃しなのの人それがしの子を養ってとなし、これに登勢を配した。登勢はまだ十歳であったから、名のみの夫婦である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
九月十一日は小雨こさめの降る日であった。鎌倉から勝三郎の病がすみやかだと報じて来た。勝久は腰部の拘攣こうれんのために、寝がえりだに出来ず、便所に往くにも、人に抱かれて往っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)