露天ろてん)” の例文
なくちゃなるまい。今夜はずいぶん久しぶりで、愉快ゆかい露天ろてんに寝るんだな。うまいぞうまいぞ。ところで草へ寝ようかな。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
風の都合で、馬鹿に大きな音になったり、或時あるときかすかになって、露天ろてん商人の呼声に混り合って、ジンタジンタと太鼓の音ばかりが聞えたりした。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夕方三人で又一君宅の風呂ふろをもらいに行く。実は過日来往返おうへんたび斗満橋とまむばしの上から見てうらやましく思って居たのだ。風呂は直ぐ川端かわばたで、露天ろてんえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
花形大夫はながただゆうの二十世紀文福茶釜は、じつは彼が新宿しんじゅく露天ろてんで、なんの気なしに買ってきた、めしたきがまであった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その提燈ちょうちんは、かみがすすけているので、くろうございました。どんなひとがそこにすわっているのだろうと、正吉しょうきちおもいながら、だんだんと、その露天ろてんほうちかづいてきました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
水につかった一切いっさいの物いまだに手の着けようがない。その後も幾度いくたびか雨が降った。乳牛は露天ろてんに立って雨たたきにされている。同業者の消息もようやく判って来た。亀戸のなにがしは十六頭殺した。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
露天ろてんに片膝立てゝこわい顔をして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)