難有味ありがたみ)” の例文
国の方の言葉、国の方の血、国の方の人——求めても得られない遠い異郷の空にあって、彼はしみじみそれらのものの難有味ありがたみを知った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
稲八金天大明権現王子いなはちこんてんだいみょうごんげんのおうじと神様の合資会社で、混雑千万、俗臭紛々難有味ありがたみ少しもなく、頭痛胸悪くなりて逃げて行く。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
「フム学問々々とお言いだけれども、立身出世すればこそ学問だ。居所いど立所たちど迷惑まごつくようじゃア、ちっとばかし書物ほんが読めたッてねっから難有味ありがたみがない」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
難有味ありがたみはなくッても信仰はしませんでも、いやな奴は厭な奴で、私がこう悪口あっこうを申しますのを、形は見えませんでもどこかで聞いていて、あだをしやしまいかと思いますほど
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
アア堂々たる男子も一旦いったんこころざしを得れば、その難有味ありがたみの忘れがたくて如何なる屈辱をも甘んぜんとす、さりとてはけがらわしの人の心やと、当面まのあたりに言いののしり、その醜悪を極めけれども
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
小父さんなぞから見るとずっと難有味ありがたみのない人だと思うにもかかわらず、そういう大人の肥満した大きな体格に、充実した精力に
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
アアアア早く嫁にでも遣りたい、嫁に往ッて小喧こやかましい姑でも持ッたら、些たア親の難有味ありがたみが解るだろう
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
根ッから難有味ありがたみがございませんもの、売ものに咲いた花でございましょう。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういう時は、医師いしゃの友達は頼母たのもしかろう。ちと処方外の療治だがね、同じ葡萄酒ぶどうしゅでも薬局で喇叭らっぱめると、何となく難有味ありがたみが違って、おのずから精神が爽快そうかいになります。しかしおびえたっけ、ははは。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)