)” の例文
お職女郎の室は無論であるが、顔の古い幅の利く女郎の室には、四五人ずつ仲のよい同士がッて、下戸上戸飲んだり食ッたりしている。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
と云つて、ひと汽車の客が皆左の窓際へつて眺めるのであつた。自分は秋草あきぐさを染めたお納戸なんどの着物に、同じ模様の薄青磁色うすせいじいろの帯を結んで居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「た、たれかと、思えば、これは過日の、先輩諸君で……。はははッ、奇遇でござるな。場所も、しがらき。ここは馬鹿どものるしがらみと、みえる」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わかったぞ! ……やい、ボーイ。そういう風にぐずつくところを見ると、貴様も同類だな。あの手紙は、酒場の人せにやった仕事だろう……。どうだ、白状しろ」
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鶏頭の葉の冷え青き雨あとをしみじみとりてる心あり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「もう洪水おおみずになろうと、この川が幾つって逆巻さかまこうと、びくともする土ではないぞ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……おめえらのような貧乏人をせたって、切手代のほうがたかくつかあ、馬鹿にするな。……うちの大将ぐれえ寝起きのわるいのはねえんだからよ。それさ、あっしがいやなのは。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)