つむ)” の例文
季和は早く睡ろうと思って無理に眼をつむって、何も考えないようにして睡ろう睡ろうとしたが、そんなことをするとなおさら睡れない。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
額は血がのぼって熱し、眼も赤く充血したらしい? ここに倒れても詩の大和路だママよとじっと私は、目をつむってしばらく土に突っ立っていた。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
そういう支度をした神下しが眼をつむってジーッと中腰に構え込んで居ると、その側ではしきりにお経を読んで居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
眼が醒めるとこの響を聞くが、眼をつむる時までこの響を聞かなければならぬ……。死んでしまって静かな所へ行ったなら、この響は聞えぬだろう。……
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それが酒断さけだちの水であらうと、塩であらうと、莫児比涅モルヒネであらうと、悉皆みんな持合せのおせつかいからする事なので、男は目をつむつて謹んでそれを戴かなければならぬ。
新生寺さんは眼をつむったまま、身動きもいたしません。啜泣きの声が、あっちこっちから聞えます。
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
オンコッコは腑に落ちないように、眼をつむって考え込んだが、急に飛び上がって叫び出した。
老婆は、下を向いて眼を細くつむって、おも語りつづけている。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)