長髯ちょうぜん)” の例文
張松のすがたを見ると、一斉に鼓を打ちかねを鳴らして歓迎したので、張松が、びっくりして立ち止まると、たちまち、長髯ちょうぜん長躯ちょうくの大将が、彼の馬前に来て
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長髯ちょうぜんをしごきながら「遠きおもんばかりのみすれば、必ず近きうれいあり。達人たつじんは大観せぬものじゃ。」と教えた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
……その吾輩が長髯ちょうぜんしごきながら名刺を突き出すと、ハガキ位の金縁を取った厚紙に……日本帝国政府視察官、医典博士、勲三等、轟雷雄チョツデヨンウウン……と一号活字で印刷してある。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長髯ちょうぜんの豪傑が四つの金襴きんらんの旗を背中にさして長槍ちょうそうを振りまわし、また、半裸体の男が幾人もそろって一斉にとんぼ返りを打ったり、小旦わかおやまが出て来て何か甲高かんだかい声で歌うかと思うと
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そこで、やっと麻酔から覚めた長髪長髯ちょうぜんの怪人物が、この臨時法廷へ連れ出された。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
伊豆国天城山南、湯ヶ野温泉旅館に数年前、白髪長髯ちょうぜんの一老翁来たり宿して、一夜のうちにふすまに文字を書して去った。その文字はなにびとも読み下すことできず、昔の天狗文字に似たる筆法である。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
先に立場へ着いた長髯ちょうぜんの侍は、茶屋の葭簀よしずも潜らずに、すぐ片手の鉄扇を上げて、馬子の溜りをさしまねいた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
広瀬の宿しゅくから追分へつづく並木の蔭を、大股に辿たどって行く武芸者がある。丈は六尺に近く、涼やかな編笠におもてを隠し、胸にそよぐ長髯ちょうぜんは刀のつばまで垂れていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例の長髯ちょうぜんを春風になびかせて、のそのそと、相府の門へいま入ってゆくのは関羽の長躯であった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関羽は、酔うとよけい、酒のあぶらで真っ黒なつやをみせる長髯ちょうぜんを撫しながら
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はやくも彼のくりのばした魚骨鎗ぎょこつそうは、ひらりと関羽の長髯ちょうぜんをかすめた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仲達は、節の太い指をくしにして、そのまばらな長髯ちょうぜんをしごいた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長髯ちょうぜんに風を与えて、関羽は駈け寄るや否
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)