鉄環てっかん)” の例文
旧字:鐵環
ここへ粮米ろうまいを入れるなり、或いは、備中びっちゅうから山野を越えて、急援に迫り、城兵と協力して、寄手の鉄環てっかんを粉砕し、羽柴筑前守秀吉なるものの名へ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾多いくたの罪人を呑み、幾多の護送船を吐き出した逆賊門はむかしの名残なごりにそのすそを洗う笹波ささなみの音を聞く便たよりを失った。ただ向う側に存する血塔けっとうの壁上におおいなる鉄環てっかんがっているのみだ。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一個の鉄環てっかんが下がっている。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「楊松のいったとおりだ」と、いよいよ楊松を信頼して、何事も彼にはかったが、もう南鄭なんていも落城し、漢中市街は、曹軍の鉄環てっかんにつつまれんとしていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
司馬懿は幸いにも後陣だったので、蜀の包囲鉄環てっかんからは遁れていたが、残る兵力を救わんため、一たんは強襲を試みて、彼の包囲を外から破らんとした。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩壁がんぺきの一たんに、ふとい鉄環てっかんが打ちこんであり、かんに一本の麻縄あさなわむすびつけてあった。で、そのなわはしをながめやると、大きな丸太筏まるたいかだが三そう、水勢すいせいにもてあそばれてうかんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)