鉄梃かなてこ)” の例文
旧字:鐵梃
はだかに半纒はんてんだけ一枚着てみんなの泳ぐのを見てゐる三十ばかりの男が、一ちゃう鉄梃かなてこをもって下流の方からさかのぼって来るのを見ました。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
懐中鉄梃かなてこを取りだし、器用な手つきで錠をねじ切ると、いきなり懐中電燈で抽斗の内部なかを照らしたが、彼は思わず歓びの吐息をもらした。
空家 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
それから二日すると、セルゲイの両の手のひらには、鉄梃かなてこや重たいシャベルを使ったらしく、大きなマメが幾つもあらわれた。
そこで我々は絶えず彼女たちの唇をこじあけるために、一本の鉄梃かなてこを用意してセットへ向かうわけである。
演技指導論草案 (新字新仮名) / 伊丹万作(著)
鉄梃かなてこを使って私はたやすく煉瓦を動かし、内側の壁に死体を注意深く寄せかけると、その位置に支えておきながら、大した苦もなく全体をもとのとおりに積み直した。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
よだれを垂々たらたらと垂らしながら、しめた! とばかり、やにわに対手あいて玉将たいしょう引掴ひッつかむと、大きな口をへの字形じなりに結んで見ていたあかがおで、脊高せいたかの、胸の大きい禅門ぜんもんが、鉄梃かなてこのような親指で
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穴をこじるための鉄梃かなてこや槌は、小者たちが持っていた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私はあの救助係の大きな石を鉄梃かなてこで動かすあたりから、あとは勝手に私の空想を書いて行かうと思ってゐたのです。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わたくしはあの救助係きゅうじょがかりの大きな石を鉄梃かなてこうごかすあたりから、あとは勝手かってに私の空想くうそうを書いていこうと思っていたのです。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ちょう鉄梃かなてこをもって下流の方からのぼって来るのを見ました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
するとその男は鉄梃かなてこでとんとんあちこち突いて見てから
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)