鉄壁てっぺき)” の例文
旧字:鐵壁
咲耶子さくやこ、咲耶子、もういかにもがいても、この八もん鉄壁てっぺきのなかからのがれることはできぬぞ、神妙しんみょうなわにかかッてしまえ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出口にはどこから現れたのか、武装した三十名ほどの警官隊がズラリと拳銃ピストルして鉄壁てっぺきのように並んでいる。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
制海権を握られたる海の上の戦争も確かに怖いけれども、ヒマラヤ山のごとき世界の金城きんじょう鉄壁てっぺきたてに取って上から下に臨む戦争も、恐ろしいものであると信ずるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すそえつきそうな紅蓮ぐれんをうしろにして、しつ引きつ、満身まんしんの力をしぼったが、はいぜんとして鉄壁てっぺきのようだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これがブーンと廻転を始めると、土は勿論もちろん、硬い岩石でも、鉄壁てっぺきでも、コンクリートでも、まるで障子しょうじに穴をあけるのと同じように、スカスカえぐられてしまうのだった。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
といって、大作戦をしかける余地のない鉄壁てっぺきだ。その不壊ふえの構えに、いて、奇手をもてあそべば、かならずかけた方の仕かけ破れになるにきまっている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エバン船長は相変らず鉄壁てっぺきのような広い胸をはって、ゆうぜんと近づいてきた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
秀吉が自分に無言でいっているものは、眼前にある敵の鉄壁てっぺきにちがいないのである。——官兵衛、何とかもうおとす工夫はないのか——という催促さいそくなのだ。あせりなのだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄壁てっぺきをたたいて呼ばわッたとたん、頭の上からパッとさしてきた龕燈がんどうのひかり、と見れば、高いのぞきまどから首を集めて、がやがや見おろしている七、八人の手下どもの顔がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄壁てっぺきの中を信じきって、熟睡していた者が多かったのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「行け行け。ここは見た通りだ。鉄壁てっぺきである」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)